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下仁田戦争 [隠れ郷土史]

道の駅下仁田からくるまで数分走って下仁田商店街に着いた。
眉間が痛い。腫れている。
鼻骨の辺りからまだ血が止まらない。
うっかり湿布なんか買って貼ったら傷にシミるし。
ああ、眉間が痛ぇ。「男ってのは痛みに弱いねぇ」(最近のジャン妻の台詞)
堪りかねて町役場に飛び込み、洗面した後、何かの受付でティッシュを貰った。そしてしばらくしたら血は何とか止まった。
うっかり触るとまた剥がれて出血しそう。

町内の無料駐車場にくるまを停めて、顔をしかめながら下仁田駅構内をウロついた。
出番を待つ車両たち。
上州のシーラカンスこと、デキもいる。
下仁田駅構内3.jpg
下仁田駅構内1.jpg
下仁田駅構内2.jpg

いきなり話が飛びますが。。。

明治新政府に水戸出身者はいない?いても要職に就いた人はいないのではないだろうか。
藩内の保守派(諸生党)と改革派(天狗党)の抗争から統制を失い、桜田門外の変、天狗党の乱、弘道館戦争と暴走を招き、藩論統一と財政難を克服できなかった。幕末政局~明治維新で主導権を握ること叶わず、人材が輩出できなかったのである。

筑波山で挙兵した天狗党という武装集団がこの下仁田町に登場する。
彼らは挙兵後、北関東を遊説して軍資金を集めたが、すぐに金が枯渇して近隣の町村の役人や富農・商人らを恫喝して金品を徴発する。
上州も狙われた。
生糸などの海外貿易で巨万の富を築いた商人がいると見られたのである。上州で徴収された金額は、桐生5875両、藤岡1008両、ここ下仁田で1695両、渋川4950両、富岡300両。。。
強請たかりに等しいのではないか。現在の金額で幾らぐらいだろうか。
また、別働隊が栃木や真鍋で放火、略奪、殺戮を繰り返し、天狗党全体が暴徒集団のように見られる。
水戸藩内の保守派も黙ってたわけではない。報復を開始して水戸藩内の内乱の様相を呈してきた。

元治元年6月から幕軍と諸藩VS天狗党の戦闘が始まる。
茨城県下妻の夜襲、水戸藩保守派の筑波勢留守宅への報復、水戸城下の交戦、鹿島の戦闘、茨城県の三十数か村の領民達が幕府軍に加勢して筑波勢へ報復、那珂湊砲撃戦、助川海防城の陥落・・・イチイチ詳しく述べないが、那珂湊での敗戦後に戦線を脱出した920余人が水戸藩領北部の大子村(茨城県大子町)に集結、武田耕雲斎を首領、筑波勢の藤田小四郎他を副将、京に上洛して一橋慶喜を通じて、(八重に登場する慶喜公は信用できないキャラだな)朝廷へ尊皇攘夷の志を訴えようと物騒な行軍を開始した。

武田や藤田他は、初期の天狗党が関東での兇行で民衆の恨みを買い、逆に損害を被ったことを念頭に置き、通過を黙認するか傍観する町では放火略奪殺戮を禁じる軍規を定めた。ほぼ道中で順守されたという。
920余人の内訳は、騎馬150、歩兵700、砲は15門あった。

だが関東諸藩で唯一、追撃して来た藩がいる。高崎藩です。
高崎藩は上州一ノ宮の貴前神社(上り階段を上がって大鳥居をくぐると、そこからまた階段を下って本殿に向かう神社)で、近隣の小幡藩、七日市藩と合同作戦会議を開いている。高崎藩は下仁田方面の地形に詳しい小幡藩と七日市藩に先陣を頼んだというが・・・
断られた。[バッド(下向き矢印)]
両藩とも兵力が少ないと。
譜代の高崎藩と、外様の小藩(七日市は加賀前田藩の分家です)。この辺りの格差や長年の確執もあったのかも知れない。

私は七日市藩の陣屋前を数回走ったが、旧道なので停め難く、学校の敷地でもあるので撮影はしなかった。
その七日市藩の名誉の為に言う。
藩は天狗党を領内の本街道を通すのを潔しとしなかったらしい。「僅か1万石の小藩とはいえ弓矢もござれば、手をつかねてお通しもなり難し」と啖呵を切った横尾という藩士が間道を案内したという。

しゃーない。高崎藩は単独で迎撃する肚積もりを固めた。300人で出兵し、西上して来た天狗党が上州一ノ宮に入ると先回りして、ここ下仁田で迎撃した。

これは下仁田商店街に残る天狗党本陣、桜井弥五兵衛宅。
弥五兵衛の夫人が「下仁田村を戦火に巻き込むな。他でやってくれ」って凄い剣幕で天狗党幹部にかみついたそうです。さすが上州の女性。
天狗党本陣桜井家.jpg
元治元年(1864年)11月16日未明午前4時、両軍の砲声、豆を射るような銃声、吶喊が山中に響いた。
下仁田の風景3.jpg

激戦だった場所にある碑。
下仁田戦争1.jpg
この地がわからず時間をロスしてしまった。私は下仁田駅にある観光地図を撮影して町内にある無料駐車場に停め、地図を頼りに徒歩で探したんだけど、地図も案内板もアバウトなんです。
アバウトな観光図.jpgアバウトな案内板.jpg
中学校まで行って引き返し、とある住宅地で陽を浴びていた爺さんに聞いた。
この頃、ようやく鼻のアタマからの出血が止まった。

「シモニタ・・・なに?アタシャ耳が遠いもんだからさ」
爺さんの耳に声高に話した。「シモニタセンソウの碑ですよっ」
「アア、シモニタセンソウノヒね。この山をぐるっと回って・・・(左に降りたところの)・・・右側ですよ。右側・・・」
爺さんの言う()内、左に降りたところの・・・の部分を失念してしまい、危うく信州方面へ行きかけた。Uターンして側道に降りたら・・・あった・・・!!

この上には資料館があるけど、くるまの人はわざわざこの崖路を登る必要はなく、国道側から入れます。
遊歩道・・・.jpg資料館.jpg
資料館には誰もいなかった。
照明も落ちてましたね。声がけしたらヒマそうな女性事務員が照明を点け、「1階では何々、2階ではこれこれ・・・」養蚕やら風穴やら、下仁田ネギやらコンニャクやらを早口に案内してくれたが、私はそれらを一切無視して、下仁田戦争と、2階にあった旧上野鉄道鬼ヶ沢橋梁のデータに見入った。
戦闘図.jpg
高崎藩兵がやってくるのを知った天狗党は三隊に分かれた。
一隊は、小幡藩の旗を掲げて、「高崎公にお味方つかまつる」と呼びかけ、油断させてから銃撃した。
本隊はこの資料館のある山に陣取り、崖下にある高崎藩本陣へ銃弾を浴びせる。
その本陣は、この辺りの名主だった里見治兵衛宅。蔵の疵は当時の弾痕だそうだが、素人目の私には漆喰が剥げたようにしか見えない。
本陣S家.jpg
当時の弾痕.jpg
鏑川の対岸から天狗党の別働隊が奇襲する。もともと3倍の兵力差があり、三面からの襲撃が決定打になり、高崎藩兵は敗走した。
この写真右の川沿いに迂回したようです。

天狗党の戦死者4人、高崎藩兵の死者は36人。
左写真は捕虜になった高崎藩兵が切腹という形で処刑された青岩河原。
斬られた辺り.jpgこの先を迂回したか.jpg
下仁田戦争説明版.jpg
十二歳の戊辰戦争.jpgちょっと余談を。。。
十二歳の戊辰戦争という書籍がある。
戊辰戦争の少年兵の証言や記録が載っている。
彼らは戦後すぐに口を開いたのではない。長年口を噤み、晩年になってからようやく話せた少年兵たちもいる。
白虎隊や娘子軍(婦女隊)、二本松藩の「少年隊」、新選組で土方が募集した少年兵たち・・・新政府軍にも少年兵がいたのだから驚く。
タイトルの十二歳という年齢は二本松藩の少年兵だが、数え年で十三歳(満十二歳)の少年たちです。

会津諸隊が国境に分散された為に急遽編成された白虎隊だが、十五歳では銃の丈に達せず、十六歳以上にされたのだが、年齢を偽ったか兵力に窮したか、十五歳以下の少年兵もいた。
会津若松駅前や二本松城の少年隊士像を見ると小柄なのに驚く。現代の少年とは体格が全く違うのは食い物が違うからとしか言い様がない。

TVで見ると白虎隊士は演ずる俳優さんがイケメンでそこそこの体格でどう見ても大人だろうって違和感を感じるのは私だけだろうか。
それなりの若手俳優さんが演ずるのは仕方がないが、実際はあれに惑わされない方がいい。
「八重の桜」第一話冒頭の鶴ヶ城戦闘シーンで、スペンサー銃を構える綾瀬はるかさんの後方に4人か5人の少年兵がいた。あれはかなり考証的には的を得ていると思うのだ。

野村丑之助墓1.jpgではこの下仁田戦争に少年兵はいたのだろうか。
高崎藩兵で10代の若さで戦死した兵が5人いて、15歳がひとり、16歳がふたり、18歳がひとり、19歳がひとり。
天狗党では13歳の野村丑之助という少年兵が深手を負って自害している。
野村を斬ったのは高崎藩の内藤という腕利きだが、斬ってから相手が少年なのに気づき、とどめを刺さずに立ち去ったという。
内藤は13か所の傷と銃弾を浴びて戦死している。



野村丑之助解説版.jpg
下仁田戦争2.jpg
下仁田の風景4.jpg
少年、野村は、武士が「痛い痛い」と言うのはみっともないので、「熱い熱い」と唸ったそうです。
それを見たら俺は、眉間が痛いの鼻が痛いのって言ってられなくなった。

天狗党は信州へと入っていく。
その先で松本藩&諏訪藩と砲火を交え、吹雪の中を北陸に向かうが、自分らが頼ろうとする一橋慶喜卿が自分らの追討軍総督になってるのを知って愕然としただろう。慶喜卿は後年、「あれは藩中の闘争だ」としか言わなかったそうです。
降伏してからの過酷な扱い、終焉についてはここでは触れません。

私は下仁田に都合4回来たが、下仁田戦争絡みのネタを全部は回りきれなかった。
現在の町は、かつて砲声銃声が響き、硝煙が巻いあがったことのある町には見えない。この静かな町で明け方4時から10時までの6時間もドンパチがあったなんて想像つかないだろう。

下仁田戦争は戊辰戦争ではないので、野村少年や、高崎藩の五人の少年兵たちは前述の本にも載ってないのです。
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